2011年3月

ESD抑制を組み込んだ薄膜コモンモードフィルタ

モバイル機器用の超薄保護

新製品TDK TCE1210シリーズは、高速コモンモードノイズ抑制とESD保護の両機能を1部品で提供する、世界初の薄膜コモンモードフィルタです。これによって、必要な部品点数と実装面積の削減し、モバイル機器の機能強化を図ることができます。

ICなどの半導体プロセスの微細化(ファインピッチ化) とともに、モバイル機器は静電気放電(ESD)に対して脆弱になっています。また、モバイル機器をパソコンその他のデジタル機器と接続するインタフェースケーブルは放射ノイズの出入口となっており、モバイル機器の高速化・高周波化が進むにつれ、高速インタフェースで放射されるコモンモードノイズ対策はますます重要な課題となっています。TCE1210シリーズの薄膜コモンモードフィルタは、ESD 保護素子を組み込むことにより、コモンモードノイズを抑制すると同時に、重要な部品を静電放電から保護します。寸法はわずか1.25 x 1.0 x 0.60 mm³と、以前のフィルタより薄く小さくなりました。これは先進の薄膜プロセス技術の成果です。2008年には、日本の日刊経済産業新聞として名高い日刊工業新聞社の“超モノづくり部品大賞”電気・電子部品賞に輝きました。この薄膜コモンモードフィルタにESD保護素子を複合一体化して、コモンモードノイズ対策と静電気対策を1部品で実現するのがTCE シリーズ。部品点数や実装面積の削減とともに、モバイル機器の高機能化にも貢献する新製品です。

USBやHDMIなど、高速デジタルインタフェースの多くは、位相が180°異なる信号を2線で伝送する差動伝送という方式を使用しています。差動伝送は平衡伝送とも呼ばれ、理論上、単線式の伝送に比べてノイズの放射が少なく、他のシステムからの放射ノイズの影響をほとんど受けません。しかし現実には、2つの信号の位相がわずかにずれたり、パルス幅や振幅に違いが生じたりして、スキューという不平衡成分が発生します。この不平衡成分がコモンモードノイズ電流となり、システムの誤動作などを引き起こします。

デジタル機器を結ぶインタフェースケーブルは、保護対策を講じなければノイズの発生源となります。そのため、電子機器とインタフェースの間に電磁適合性(EMC)対策部品としてコモンモードフィルタが必要です。

HDDヘッド技術を応用して小型化を実現

ノートパソコンなどのデジタル機器のコネクタ部に搭載されるコモンモードフィルタは、自動巻線に対応させるため、リングコアではなく、ドラムコアに導線を巻いてから平板状のSPコアを取り付けて、コア全体を環状にした構造となっています。高速差動信号ライン用として、TDKではACMシリーズとしてラインアップしています。ACMシリーズは今のところ2012サイズ(2.0×1.2mm)が最小です。これは米粒以下の小さなサイズですが、回路の省スペース化が極限まで進んでいる携帯電話やデジタルカメラでは、特に小型・低背化が求められています。そこで技術者は、HDDヘッド生産で培った高度な薄膜プロセス技術を応用し、フェライト層の上に薄膜導体のコイルを積層形成しました。その成果が薄膜コモンモードフィルタTCMシリーズです。これは従来のフィルタの半分も場所をとりません。

とりわけモバイル機器はケーブルの抜き差しなどで手に触れることが多いため、より確実なESD対策が求められます。

図1: コモンモードフィルタTCE1210シリーズの基本構造
TCE1210シリーズでは、薄膜工法によって、マイクロギャップ方式のESD保護素子(黄色の層)がコモンモードフィルタに挿入されています。

新しいTCE1210シリーズには、ESD保護素子とコモンモードノイズ抑制素子が1部品に組み込まれています。これは安定した特性をもつマイクロギャップ方式の電極構造を開発することによって実現しました。マイクロギャップ方式のESD保護素子は、一対の電極をガラス管の中に封入してチップ部品に加工したもので、小型避雷器の機能を果たします。その大きな利点は端子間容量が非常に低いことです。これによって、非常に高いデータレートでも信号を歪ませずにESDを抑制することができます。

マイクロギャップ方式のESD保護素子はフェライト基板上に組みつけます。その上に薄膜コイル、絶縁層などを積層して、薄膜コモンモードフィルタを形成します(図1)。

図2: USB 3.0信号の放射バランス

TDK TCE1210シリーズの使用により、ノイズが15dB程度まで低減されています。

TCE1210シリーズはUSB3.0要件に余裕をもって適合しています。図2に示すのは、コモンモードフィルタとしての効果を確認するため測定データです。伝送信号としてUSB3.0の2.5GHz(転送レート5Gbps)の信号を用いています。フィルタなしの場合、2GHz~3GHzの間でノイズレベルが顕著に高くなっているところが見られますが、TCE1210シリーズの使用によってノイズが15dB 程度まで低減されていることがわかります。

図3: バリスタとコモンモードフィルタTCE1210のインピーダンス特性

TDK TCE1210により、特性インピーダンスが90±7Ωに保たれ、USB3.0の新規定に適合します。

図3は、TCE1210のESD抑制効果をはっきりと示しています。1pFの端子間容量をもつバリスタを使用すると、特性インピーダンスは80Ω以下まで低下します。一方、USB3.0の特性インピーダンスの規定は90±7Ωとなっているので、TCE1210シリーズの特性インピーダンスはUSB3.0の要件に適合し、信号にほとんど影響を及ぼさないことがわかります。

図4: TCE1210シリーズを使用した場合と使用しない場合のESD吸収

TCE1210シリーズは、ESDを安全レベルにまで吸収します。

また、ESD対策を施さなかった場合は、波形に急激なスパイクが見られます。TCE1210シリーズは、静電気の吸収に十分な効果があります(図4)。

必要な部品点数を大幅に削減

TCE1210シリーズは、必要な部品点数と実装面積の大幅削減を可能にします。たとえば、差動伝送方式のHDMIにおいては、従来は1端子あたり4個のコモンモードフィルタが用いられ、そのそれぞれに2個のバリスタが取り付けられて、合計12個の部品が必要でしたが、ESD保護素子を内蔵したTCE1210シリーズでは4個の実装ですむことになります。

主要データ: 薄膜コモンモードフィルタTCE1210
品名TCE1210-900-2P
コモンモードインピダンス [Ω]60 min. 90 typ.
カットオフ周波数 [GHz]5.0
ESD規格IEC61000-4-2 レベル 4 対応
クランプ電圧 (最大) [V]100
定格電圧 (最大) [V]10
定格電流 [mA]100
寸法 [mm³]1.25 × 1.00 × 0.60

携帯電話、デジタルカメラ、携帯音楽ブレーヤなど、高機能化と小型化が進むモバイル機器において、部品点数や実装面積の削減は、今まで以上に強く要求されると予測されています。そのため、伝送信号の高周波化に応じたコモンモードノイズ対策と、半導体プロセスの微細化に応じたESD対策は、今後ますますモバイル機器に不可欠なものとなるでしょう。新製品TCE1210シリーズはこのような要求に応え、モバイル機器のパフォーマンスと信頼性の向上に寄与します。

Basic noise suppression principle of common-mode filters

コモンモードフィルタは、リング状のコアに2本の導線を同じ方向に巻き付けた電子部品です。コイルに電流が流れると、発生した磁束がコアの中を流れます。信号電流もコイルを通過します。しかし、信号はディファレンシャルモードを使用しているので、往路と復路は逆向きです。磁束も逆向きになるので、コアの内部で相殺されます。そのため、コモンモードフィルタは信号電流に影響を与えません。

それに対して、コモンモードノイズ電流は同じ方向に流れます。したがって、コイル内部の磁束も同じ方向 に流れ、累積し、強くなりますその結果、インピーダンスが増大し、コモンモードノイズ電流の通過が阻止されます。

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