2011年11月

マイクロDC/DCインバータのリファレンスデザイン

太陽光発電の効率を大幅向上させるマイクロインバータ

TDK-EPCはSTMicroelectronicsと共同で、太陽光発電設備用の小型インバータのリファレンスデザインを開発しました。これによって、太陽光発電設備の効率を大幅に向上させることができます。

単一の太陽電池の出力、また一般に複数のモジュールを直列に接続した太陽光発電設備全体の出力は、主に太陽電池への入射光で決まります。入射光が増大するほど、モジュールから多くの電流を引き出すことができます。もう1つの出力決定要因は太陽電池の温度です。温度が上昇すると出力電圧は降下してしまいます。この依存関係を図1に示します。

図1: 太陽電池モジュールの電流と電圧の特性

太陽電池モジュールの出力は、入射光と温度の関数として大きく変化します。

理想的な動作点は、これらの特性から読み取ることができます。動作点に達するのは、電流と電圧の積が最大のときです。この最適な動作点を最大電力点 (MPP) といいます (図2)。

図2: 理想的な動作点

太陽電池モジュールの電流-電圧特性 (赤) と電力特性 (青)。理想的な最大電力点 (MPP) に達するのは、電流と電圧の積が最大のときです。

最新型ソーラーインバータの場合、最大電力点追従 (MPPT) は、たえずプロセッサ制御アルゴリズムによって理想的な動作点を決定します。これによって、入射光と温度の変動パターンに対するMPPの依存度は大幅に低減します。


しかし、この方法が受け入れられるのは、太陽光発電設備または電池ストリングのモジュールがすべて理想的な条件で動作している場合にかぎられます。MPPTが常時評価するのは太陽光発電設備または電池ストリングのみであり、太陽光発電設備またはそのモジュールが一部でも影に入ると、この方法はうまく機能せず、結果として、かなりの電力損失が発生します。

この問題を解決するため、TDK-EPC はSTMicroelectronicsとの共同により、MPPT内蔵のマイクロインバータを開発しました。このインバータは、寸法がわずか78 × 47 × 13 mmという省スペース設計のため、太陽電池モジュールの端子箱に収容できます。た、このインバータ1つでモジュール内の各電池ストリングを操作することも可能です。図3は、MPPT内蔵マイクロインバータの回路図です。

図3: MPPTを内蔵したマイクロインバータの回路図

インバータには、入力電流を安定させる4つのブーストストリングが組み込まれています。論理回路全体とパワーエレクトロニクスが1つのICに収容されています。TDK-EPCは、EPCOSのストレージチョークやTDKの MLCCなど、この設計に用いるすべての受動電子部品を供給します。

MPPT内蔵マイクロインバータは、出力電圧が入力電圧を超えるというブースト原理に基づいて作られています。入力電流を一定に保ち、モジュールの効率を高めるため、インバータの内部では、EPCOSのMOSFETスイッチとSMTパワーインダクタ (B82477G4473M000) が個々に実装された4つのブーストストリングが動作します。これらのストレージチョークは、インダクタンスが47 µH、定格電流2.5 A向けに設計されています。きわめて高い性能ながら、寸法はわずか12.8 × 12.8 × 8.0 mmです。また、回路のEMCを改善するため、ストレージチョークには磁気シールドが装備されています。これらの部品は実装回路で確認できます (図3)。

MPPTマイクロコントローラは、4つのブーストストリングを駆動します。位相オフセットは90°です。この区分により、太陽電池モジュールの電流負荷はきわめて安定します。インバータの入力と出力 (図3のC11とC12) の平滑コンデンサおよびバッファコンデンサの定格値は、同時に小さく保つことができます。このような理由から、ここでは定格が1 µFと4.7 µFのTDKの MLCCが使用されます (表)。先進のセラミック材料技術と積層テクノロジーによって製造されるMLCCは、タンタルまたはアルミ電解コンデンサのような極性部品と比べて、小型で非常に長い動作寿命と長期安定性が特長です。部品を選択する場合、長い動作寿命は決定的に重要な条件です。とりわけ太陽電池モジュールにおいては、インバータは端子箱に収容されており、保守や交換は困難です。

図3の回路図に示したMPPT内蔵インバータの材料一覧

部品メーカー注文コード
C1, C2, C3, C4, C822 nFTDKC1608X7R1H223K
C111 µFTDKC3216X7R1H105K
C9220 pFTDKC1608C0G1H221J
C7470 nFTDKC1608X7R1C474K
C6, C12, C134.7 µFTDKC3225X7R1H475K
L1, L2, L3, L447 µHEPCOSB82477G4473M003
R12.7 MΩVISHAYD11/CRCW0603 1M 1%
R2110 kΩCYNTECRR0816R-114-DN-11
R34.3 MΩVISHAYD11/CRCW0603 4.3M 1%
R4110 kΩCYNTECRR0816R-114-DN-11
R51 kΩCYNTECRR0816R-102-DN-11
D1, D2STSTPS15L60B
D3STSTPS160
J35STSPV1020

STMicroelectronicsのシングルチップソリューションには、パワーMOSFETとMPPTコントローラだけでなく、3つのアナログ-デジタルコンバータ (ADC) も含まれます。そのうち2つのADCは、インバータの入力の電圧と電流を記録します。マイクロコントローラは、これらの値に基づいてMPPを計算します。このブーストトポロジーを使用すると非常に高い出力電圧が得られるため、第3のADCで出力を監視します。

出力電圧が規定値を超えると、MOSFETスイッチの駆動が中断します。そうすると、モジュールの電流が4つのストレージチョークと減結合ダイオードを介して負荷に直接流れます。図4は、インバータの使用により、太陽電池モジュールの効率が大きく高まることを示しています。この場合、モジュールの3つの電池ストリングは、インバータによって動作します。その結果、電流と電圧には赤の特性、電力と電圧には緑の特性が得られます。比較のため、インバータを使用しない同じモジュールの特性も示します (橙と青)。

図4: インバータを使用した場合と使用しない場合の特性

インバータを使用すると、太陽電池モジュールのMPP領域が著しく広がります (緑)。ちなみにインバータを使用しない場合は、MPP (赤丸) を1つだけ示す青の特性が得られます。

MPPTインバータを使用することにより、太陽電池モジュールと太陽発電設備の効率が大幅に向上します。たとえば、出力の異なる24 Vモジュールでは、インバータ効率が97 %を超えます (図5)。

図5: 出力電圧の関数としての効率

電力と出力電圧が一定範囲にあるとき、インバータと複合したモジュールの効率は97 %超を保ちます。

TDKおよびEPCOS製品による
高信頼性のリファレンスデザイン

TDK-EPCは、リファレンスデザインの作成でSTMicroelectronics のサポートを強化しています。STMicroelectronics は最近、電源用を主とする50件目のリファレンスデザインの共同開発を終えたところです。これらのリファレンスデザインは、STMicroelectronics の最新型ICとTDKおよびEPCOSの革新的な製品を組み合わせたものです。

ICメーカーにとって設計上の大きな問題は、最適な受動部品の選択と適格性評価であり、これが設計のエネルギー効率を決定する要因となります。

「当社のお客様は、ことさら設計上の努力をしなくても、TDKおよびEPCOSの高性能の製品に適したリファレンスデザインが信頼できることを知っています」と、STMicroelectronicsのシニアマーケット開発マネージャー (エネルギー効率、EMEA地域担当)、Ulrich Kirchenberger氏は述べています。したがって、お客様は自社のコアコンピテンスに集中しながら、市場投入までの時間短縮、開発コストの低減が可能となります。

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