2012年5月

デカップリング用積層フェライトコイル

小型積層タイプで、巻線コイルなみの特性を実現

DC-DCコンバータにおけるスイッチングによる電源電圧の変動は、ノイズとして電源ラインを通じて他の回路に波及します。 TDKの積層フェライトコイルMLZ-Hシリーズは、デジタルカメラやビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器の電源回路のデカップリング用としてすぐれた特性を備えています。

半導体の小型化は回路の動作速度を上げ、駆動電圧の低下につながります。 たとえば、ICを利用した回路の駆動電圧は5 Vから1 V以下へと徐々に低下しています。 しかし、このように低電圧化が進むと、わずかな電圧変動でもICの誤作動を引き起こすため、従来以上に安定した電源が求められます。 近年、電子機器の高速化に伴い、小型DC-DCコンバータがICごとに近接配置されるようになりました(POL: Point of Load)。 図1はコイルを使用したデカップリングの例です。

図1: コイルによるDC-DCコンバータ電源回路のデカップリング
効率を高めるため、通常はLCフィルタ(ローパスフィルタ)として使用する。TDKの積層フェライトコイル

LCフィルタで回路効率を改善
デカップリング用コイルは電源回路に直列接続されます。デカップリング用コイルには主に2つの働きがあります(図2)。 1つはDC-DCコンバータによって発生する高周波ノイズの低減です。 交流電流の周波数が高いほど抵抗は大きくなります。 その効率を高めるため、通常はLCフィルタ(ローパスフィルタ)として使用します。 コイルとは逆にコンデンサは高周波ほど電流を通しやすいため、コイルで反射させた高周波ノイズをコンデンサ経由でアース側にバイパスするのです。

デカップリング用コイルのもう1つの役割は電源電圧の安定化です。 コイルは変動する電流に対して、変動を阻止するような方向に起電力を発生させ(コイルの自己誘導機能)、電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄えます。 このため、電源電圧の瞬間的な上昇や降下などに対しては、コイルはその変動を抑制するように作用して電流の大きさを保ち、電源電圧を安定化させます。

図2: デカップリング用コイルの働き
ノイズ低減
電圧安定化
高周波ノイズ低減(左): コイルは高周波ノイズを遮断するので、ノイズをコンデンサ経由でアース側にバイパスさせ、他の回路への波及を防ぐ。 電圧安定化(右): コイルは電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄え、瞬間的な電圧変動を抑制するように作用して電源電圧を安定化させる。

定格電流を大幅アップ
電源回路は信号回路とくらべて、はるかに大きな電流が流れるため、デカップリング用コイルとしては、従来、巻線タイプが主流でした。 巻線コイルは積層コイルにくらべて電流特性にすぐれるため、積層コイルを使用できる機器は少なかったのです。 これを一変したのがTDKの積層フェライトコイルMLZシリーズです。以前は巻線タイプにしか適合しなかったさまざまな回路にも対応します。

MLZシリーズの製品化にあたり、TDKはフェライトに関する長年の実績と先進の材料技術を生かし、従来材と同等の基本組成ながら、飽和磁束密度を大幅に高めたフェライト材を新開発しました。 これをベースとして2009年に製品化したのが、定格電流を従来製品比で最大2.5倍に高めたTDKの積層フェライトコイルMLZ-Wシリーズです。

図3: 巻線コイルと積層コイルの比較
TDK MLZ-Hシリーズは巻線コイルにくらべ、はるかに小さいパッケージながら、ほぼ同等の定格電流値を実現します。


このMLZ-Wの定格電流をさらに高めたMZL-HシリーズもMLZファミリーに加わりました(図3)。 新製品MLZ2012-Hシリーズは、直流重畳特性をさらに改善するとともに、積層構造を最適化することにより、インダクタンス値1.0 μHで700 mAの定格電流を実現しました。これはMLZ-Wシリーズの最大2.5倍(図4)で、巻線コイルと同等レベルです。 低抵抗電極を採用したこともこれに寄与しています。 また、MZL-Hシリーズはすぐれた磁気シールド構造を採用しているため、高密度実装にも対応できます。 なお、このシリーズはRoHSに準拠し、鉛フリーはんだにも対応します。

図4: TDK MLZシリーズのインダクタンス直流重疊特性(1.0 μH)
飽和磁束密度を高めた新フェライト材により、直流重畳特性大幅に向上

用途の広がるデカップリング用コイル
TDK MLZ-Hシリーズにより、以前は大型の巻線コイルに限定されていた多くの用途でもハイスペックの積層フェライトコイルが使用できるようになりました。これは独自のフェライト材と最適な積層構造によるものです。巻線コイルと同等の直流重畳特性を備え、かつ小型・低抵抗を特長とするため、デジタルカメラやビデオカメラ、ノートパソコンのような小型電子機器の電源回路のデカップリング用として最適です。

表: TDK MLZ-Hシリーズの主な仕様と電気的特性

MLZ2012M1R0HTMLZ2012M2R2HTMLZ2012M4R7HTMLZ2012M100HT

インダクタンス

[μH]

1.0

2.2

4.7

10

インダクタンス
許容差 [%]
±20±20±20±20
自己共振周
波数 [MHz]

150

100

60

40

直流抵抗 [Ω]

0.10

0.16

0.34

0.68

定格電流 -1
[mA] *

700

400

300

200

定格電流 -2
[mA] **

800

600

400

300


* インダクタンス低下率Max 50%で規定したときの電流
** 温度上昇Max 20℃で規定したときの電流(参考値)
テスト条件: 周波数2 MHz、電流0.1 mA、周囲温度Max 105℃


インダクタンスと周波数

インダクタンスと直流重畳

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