2011年11月

LAN用SMD型パルストランス

画期的なスペース削減を実現

イーサネット接続でパルス信号を高速伝送するには、入力と出力の間に確実な絶縁をほどこす必要がありパルストランスが使用されます。TDKのSMD型パルストランスALT4532は、革新的な自動巻線工法を採用した新製品。きわめて安定した電気的特性とともに実装面積の大幅削減を実現します。

イーサネットによるLAN接続は、パソコンはもとより、デジタルテレビやマルチメディア家電までの各種デジタル機器においても標準機能になろうとしています。従来、LAN用パルストランスは、1次側および2次側の巻線がほどこされたトロイダルコア(リング状コア)で構成されていました。トロイダルコアを用いたトランスは、エアギャップのあるコアを使用する他のトランスと比較して、漏れ磁束(リーケージフラックス)を低く抑えて高い性能を発揮することができます。このため、従来のパルストランスはトロイダルコアを用いたトランスとして設計されてきたのです。しかし、トロイダルという形状の制約により、自動巻線工法の導入が困難であり、手動巻線に頼らざるを得ませんでした。ただし、手動巻線では完成品に特性のバラツキが生じるのは不可避で、また品質の安定化と量産化の支障にもなっていました。

比較的シンプルな動作原理と基本構造にもかかわらず、パルストランスは実際の製造がきわめて難しい電子部品です。設計やコア材質の選定、巻線のほどこし方などが、大きく影響してくるからです。また、均一な電気的特性を大量生産で達成することも容易ではありません。そこで、自動巻線工法による製造プロセスを可能にする新設計を採用して製品化したのが、TDKのSMD型パルストランスALTシリーズです。

ALTシリーズに採用された新設計は、ノイズ対策部品として多用されているTDKのSMD型コモンモードフィルタをベースとしたものです。コモンモードフィルタでは、パルストランスと同じように、基本的にトロイダルコアに2本の巻線がほどこされた構造となっています。TDKでは自動巻線工法に対応させるため、長方形状のドラムコアに自動巻線をほどこしてから、平板状のプレートコアに結合するという製法を開発し、SMD型コモンモードフィルタとして製品化しました(図1参照)。ALTシリーズは、この製法を取り入れたもので、自動巻線によって製造される業界初のパルストランスです。

図1: SMD型パルストランスALT4532の新しいコア構造

自動巻線工法により、長方形状のドラムコアに2つの巻線をほどこした後、平板上のプレートコアを接着して、機能的にトロイダルコアと同等のコアを作成します。磁束は2つのコアの内部を通して伝わります。

高度なノウハウが求められる巻線構造

理想的なトランスでは1次巻線と2次巻線の間の結合係数(k)は1になります。ただし、実際にはトランスコアのエアギャップによる漏れ磁束やその他の要因により、結合係数は1より小さくなり、その結果、リーケージインダクタンスによりトランスの性能が低下します。ALTシリーズの設計課題は、結合係数を可能なかぎり1に近づけることでした。そのためにドラムコアとプレートコアとの接合面のギャップを従来の半分以下にし、漏れ磁束の大幅低減を達成しました。また、巻線自体の構造も結合係数の最適化のために重要なポイントです。巻線の各ターンは電気的に絶縁されていますが、電位差によって、隣接する巻線どうしはコンデンサの電極板のように作用し、巻線間容量が発生します。

さらにはトランスで発生する別の種類の寄生容量もあります。トランスの1次巻線と2次巻線の間の巻線分布容量です。巻線構造を最適化するには、このような寄生容量と増加するリーケージインダクタンスとの間でトレードオフの関係が生じるため、きわめて高度な技術的ノウハウが必要になります。

 

コア材として最適なフェライト

パルス波形はきわめて広い周波数帯域をもつため、パルストランスにおいては最適なコア材を選択し、信号品質を劣化させるパルス波形の過度な歪みを回避することが重要になります。たとえば、100BASE-Tイーサネット接続用のパルストランスでは、8 mAの直流バイアス電流を印加する場合、350 μH以上のインダクタンス値が求められます。このため直流重畳特性にすぐれたフェライトがコア材として強く求められます。これは直流バイアス磁界が印加されても、磁化曲線が直線を維持するためです。つまり、一般的なLAN環境の温度範囲全体において透磁率と飽和磁束密度がともに高いフェライト材が必要になるのです。

そこでTDKはフェライトに関する蓄積ノウハウを駆使、材料組成や微細構造をパルストランス用途向けに最適化したフェライト材を探究。ALTシリーズにおいては、次世代高速LANの技術要求を満たす一方で、従来材を使用したパルストランスよりもコア体積や巻線数を軽減できる新しいフェライト材を採用しました。その結果、SMD型パルストランスを、わずか4.5 × 3.2 mm2(4532形状)の実装面積という小型サイズで実現しました。

 

自動巻線による大幅な性能向上

LAN用パルストランスに求められる高信頼性と高特性を小型SMDパッケージで実現したのがALTシリーズです。図2のアイパターンで明らかに示されているように、大型の従来品と同等のシグナルインテグリティを達成しています。

ALTシリーズにおいては、自動巻線工法に加えて、端子電極とワイヤの接合に、自動化による熱圧着工法も採用しています。また、従来品は、電気的検査からテーピングまでの段階をバッチ工程で半自動製造されていましたが、ALTシリーズでは連続的かつ完全自動化された製造工程が導入され、従来品よりも均一した品質で量産されるようになりました。

図2: イーサネット用途でのアイパターン評価の比較

超小型にもかかわらず、ALT4532は従来品と同等の信号品質を実現しています。

大幅な省スペース化を実現

パルストランスは、通常、コモンモードチョークなどとともにLANモジュールに組み込まれます。従来のコンポーネントにおいてパルストランスを搭載するときには、多くの場合、複雑な配線処理とはんだ処理が手作業で行われ、はんだ付けを行う前には樹脂で固定する必要がありました。パルストランスALTシリーズにおいては、SMDコンポーネントとして、リフローはんだ付け時に他の部品と一括して搭載できるため、工程が大幅に簡素化され、組み立て時間が短縮されます。

また、差動伝送方式のノイズフィルタを組み合わせる場合、小型化によってさらなる省スペースが実現します。パルストランスALTシリーズをTDKのコモンモードフィルタACMシリーズと組み合わせて使用した場合、従来のトランスとコモンモードチョークを使用した場合と比較して、必要な総実装面積を約40%削減できます(図3参照)。ALTシリーズおよびACMシリーズは、このような先進設計が取り入れられているため、コンポーネントの小型化が特に求められるデバイスへの組み込みにも最適です。

図3: TDKのSMD製品による省スペース化(100BASE-TX)

TDKのSMD型パルストランスALT4532とSMD型コモンモードフィルタACM2012を組み合せることで、従来のソリューションと比較してPCB上の領域を最大40%節約できます。

ALT4532シリーズの主な技術データ

品名ALT4532-001T
最小インダクタンス [µH]200 (直流バイアス100 mA、100 kHz)
最大挿入損失 [dB]1.5 (0.1 - 100 MHz)
最大巻線間容量 [pF]35 (100 kHz)
使用温度範囲 [°C]0 - +70
形状 [mm]4.5 × 3.2 × 2.8 (長さ×幅×高さ)

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