2012年5月

車載用フェライト磁石

薄肉・高性能化により、モータの経済的設計を推進

TDKは新工法により、形状および性能がネオジムボンド磁石に迫る超薄肉異方性フェライト磁石 FB13BとFB14Hを開発しました。従来以上に幅広い用途で、小型・高性能モータやアクチュエータの経済的設計を可能にする革新的なフェライト磁石です。

省エネで高性能の小型・軽量モータは、特に使用数が増え続けている車載用のニーズが増大しています。 このような状況では磁石の選択が決定的な要因となります。 現在入手できる磁石で最も性能が高いのは、ジスプロシウム(Dy)を添加して固有保磁力(HCJ)を強化した焼結ネオジム磁石です。 しかし、希土類金属であるネオジム、とりわけジスプロシウムの供給量は非常にかぎられています。

そのため、TDKは希土類金属の代替品探しに力を入れています。 希土類をできるだけ使用しないモータの開発を目指し、日本最大の公的研究開発機関である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のリサーチプロジェクトに参加しているほか、蓄積した豊富なフェライト技術を駆使した高性能磁石の開発に注力しています。 目標は、エアコン用コンプレッサモータや、エレクトリック化により使用数が増加している車載用マイクロモータなど、量産アプリケーションにおける高い性能とコスト競争力を兼ね備えたモータの実現です。

高性能フェライト磁石のリーダー
TDKは、希土類金属の微量添加により、フェライト磁石の高性能化を実現したパイオニアです。 たとえば1990年代には、ランタン(La)とコバルト(Co)の微量添加により固有保磁力(HCJ)を大幅に向上させた革新的な材料を開発し、現在では乾式および湿式成型法で製造した異方性フェライト磁石の各種製品をとりそろえています(図1)。

図1: 高性能化を続けるTDKのフェライト磁石

乾式および湿式成型法で製造したTDK異方性磁石の各種製品

どちらの製法にも利点があります。乾式成型では、湿式成型よりも小さく複雑な形状の成型が可能です。 それに対して湿式成型による磁石は、材料FB12の例が示すようにすぐれた磁気特性を特長とします。 たとえば、FB12の温度係数は先行材料であるFB6の3分の1なので、低温減磁に対する抵抗力が大幅に向上します。また、 FB12の固有保磁力は-40 °Cで402 kA/mとFB6Nの約1.9倍です。 その結果、パーミアンス係数(PC)を小さくしたり磁石を非常に薄くしたりすることができます。

湿式成型による磁石はすぐれた磁気特性を持ちますが、従来の技術には限界がありました。 それは成型時の肉厚が3 mm以上あり、さらに焼成後の研削代(しろ)が相当必要になるということです。 つまり、研削に余分なエネルギーを要するほか、研削時の破損や製品強度の劣化といったリスクが生じます。 従来の乾式および湿式成型法を用いるかぎり、薄い形状か高い磁気特性かのどちらかを選択しなければなりません。

フェライト磁石の薄肉化に向けた新しい解決策
このようなサイズと性能のジレンマを解決するため、TDKは“NS1工法”という新製法を開発しました。 NS1工法は薄肉・異方性フェライト磁石を実現するための新しいニアネット成型法です。製品を最終形状(ネットシェイプ)にきわめて近いサイズと形状に成型することで表面処理の必要性を減らすとともに、湿式成型法よりも高い磁気特性を実現します。 この工法の大きな特長は、密度が均一で理想的に配向した成型体を製造できることです。 その成果が、ネオジムボンド磁石に非常に近い磁気特性をもち、厚さがわずか1 mmの非常に薄い異方性フェライト磁石FB13BとFB14Hです。これによって多極モータのさらなる小型化の可能性が広がります(表1)。

表1: 従来のフェライト磁石とTDK NS1フェライト磁石を使用したモータ設計

材料FB6BFB9BFB13B
極数224
モータ径 [mm]403733.4
モータ体積比率 [%]1008670
磁石肉厚 [mm]5.03.51.9
磁石総重量比率 [%]1007240
多極ブラシ付きマイクロモータにTDKの新しい薄肉フェライト磁石 FB13B / FB14Hを使用すれば、従来の異方性フェライト材料FB6B / B9Bを使用した場合にくらべ、30 %の小型化と60 %の軽量化が可能になります。

設計自由度と性能の向上
燃料効率改善とCO2排出量削減が義務づけられたことにより、車載用モータの小型・軽量化のニーズが高まっています。 多極モータを小型化するには、薄肉フェライト磁石FB13B / FB14Hがネオジムボンド磁石の経済的な代替品となります。また、これらのフェライト磁石は耐熱性や耐食性、着磁容易性の面でも明らかな利点があります。

図2: マイクロモータでのTDK FB13B組込評価

FB13Bを使用したマイクロモータは、トルクが従来の材料を使用したモータ比で最大14 %向上します(モータ径Ø 14 mmの評価)。

これまでは、湿式成型による磁石が十分に薄くないため、やむをえず乾式成形磁石を使用しなければならない場合がありました。 しかし、NS1工法の開発により、車載用として使用されることの多いブラシ付マイクロモータ(Ø 14 mm)では従来の乾式成型による薄肉磁石をFB13BやFB14Hに置き換え、モータ性能の大幅向上を図ることができるようになりました(図2)。 さらに、NS1工法の形状自由度を生かせば、弧が深いC形状マグネット(両端部Sharp Edge)の成型が可能になり、図3に示すようにトルクが同形状のFB5D比で14 %向上します。 この場合、ネオジムボンド磁石を使用したモータに匹敵する結果が得られます。

図3: 形状自由度により高性能化を実現

新しいNS1工法によって設計自由度が広がり、トルクを大幅にアップする深い弧の形状が成型可能になります。

すぐれたコストパフォーマンス
すぐれた機械・磁気特性と薄肉形状を兼ね備えたTDKのフェライト磁石FB13BとFB14Hは、パワーウィンドウ、パワーシート、燃料ポンプをはじめとする車載用の小型モータやアクチュエータに最適です。FB13BとFB14Hの主な磁気特性を表2に示します。

 

表2: TDKのフェライト磁石FB13BとFB14Hの磁気特性

材料FB13BFB14H
残留磁束密度BR [mT]475 ±10470 ±10
保磁力HCB [kA/m]340 ±20355 ±20
固有保磁力HCB [kA/m]380 ±20430 ±20
最大エネルギー積BH [kJ/m³]44.0 ±1.643.1 ±1.6
BRの温度係数 [%/K]-0.18-0.18

希土類元素の安定調達が懸念される中、薄肉・高性能のフェライト磁石は時代のニーズに合致しています。 この新しいフェライト磁石FB13BとFB14Hにより、製造・研削工程の最適化と原材料の使用量削減が進み、その結果としてコストパフォーマンスが大幅にアップします。

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