2011年10月

電力半導体向けNTCサーミスタ

電力半導体の過熱防止と高信頼性の温度監視を実現

ウェハベースの製法によりTDK-EPCが開発した新型EPCOS NTCサーミスタは、IGBTやSiCなどの電力半導体に容易に組み込み可能なチップタイプの先進部品。過熱防止や高信頼性の温度監視機能の実装により、対策に費用のかかる故障や破壊などのトラブルから電子システムを守ります。

 

従来のセラミックベースのNTC (負温度係数) サーミスタは、温度測定には理想的かつコストパフォーマンスにすぐれた電子部品で、EIAケースサイズ (0402、0603、0805など) のリード式製品またはSMD部品(表面実装部品)として製造されてきました。


これらのNTCサーミスタは、自動車、産業機器、家電 (たとえば冷蔵庫、洗濯機、食器洗浄機、電子レンジ) など、幅広い用途で使用されています。また、小型SMDタイプのNTCサーミスタは、過熱防止用IGBTモジュールなど、電力半導体に直接組み込まれるようになってきました。しかし、従来のNTCサーミスタでは、プロセス管理において以下のような問題をかかえています。

  • ハンダ付けや接合プロセスのために、端子を半導体基板上のパッドとして設計しなければならない。
  • 部品が完全な下向き姿勢になっていないと、基板とNTCサーミスタとの熱抵抗が増大する可能性がある。
  • 基板とNTCサーミスタの温度係数が異なると、割れが発生する可能性がある。
  • 半導体の射出成形プロセスで発生する熱応力や機械的応力により、サーミスタに割れが生じる可能性がある。

これらの問題は、複雑で費用のかかる加工技術を用いれば部分的には解決可能であるものの、半導体の生産加工時に割れが発生するリスクを完全に排除することはできません。これらの問題を解決するため、TDK-EPCではウェハベースの製法を開発(図1)、チップタイプの新型EPCOS NTCサーミスタとして製品化しました。

図1: シンギュレーション (ダイシング) 前のNTCサーミスタのウェハ
完成したキャリア付きNTCウェハ。通常、接触域はチップの側面ではなく上下面です。

ウェハから製造するNTCサーミスタの場合 (図2)、端子の配置はきわめて重要です。通常のSMD部品とは異なり、端子は部品の側面ではなく上面と下面にあります。これによって、半導体基板と下面の端子が直接かつ非常に均一に接触します。上面の端子は従来の接合法で接触します。最適な接合状態を得るため、接触面には金めっきか銀めっき処理されます。基板上で端子を水平に配置することにより、割れのリスクが大幅に軽減し、はんだ付けも不要になります。

 

図2: チップNTCサーミスタ
部品の上下面に端子を配置することで、割れのリスクが大幅に軽減します。

半導体メーカーの要求に応える狭い許容差と高い精度

チップNTCサーミスタのもう1つの利点は、電気および熱の許容差が非常に狭いことです。この精度は特殊な加工技術によって実現します。部品を分離する前に、定格温度を100 °Cとしてウェハの全抵抗を決定し、それに基づいて分離するサーミスタのサイズを計算するので、個別部品の許容差を大幅に縮小できます。図3は、定格温度が25 °Cの場合と60 °Cの場合の、温度と抵抗の∆値を示したものです。

  

図3: 抵抗と温度の許容差

定格温度が25 °Cの場合と60 °Cの場合の、EPCOS NTCチップサーミスタの抵抗 (左) と温度 (右) の許容差

狭い許容差とそれによって得られる高い精度は、半導体メーカーの要求を満たして余りあります。これによって、IGBTモジュールを最大許容値に非常に近い温度で使用できるようになります。

NTCサーミスタのB値とその許容差は、精度にとって重要です。一般に、B値はR/T曲線の勾配を規定します。B値の許容差が狭いほど、測定精度は高くなります。その関係は図4を見れば明らかです。抵抗と温度はB値の許容差の関数として変化します。

 

図4: B値の関数である抵抗と温度

B値の許容差が狭くなるほど、測定精度が高くなります。このグラフは、ΔB/B値が0.3 %と1 %のときの抵抗 (左) と温度 (右) の許容差を示しています。

  

B値が測定精度に及ぼす影響を図5に示します。この図は、定格温度を25 °C (B値の許容差3 %、R25/25での許容差5 %) とするケースサイズ0603の従来のSMD NTCサーミスタと、定格温度を100 °C (B値の許容差1 %、R25/100での許容差3.5 %) とするチップNTCサーミスタを比較したものです。許容差はチップNTCサーミスタの方が明らかに狭く、すぐれています。

  

図5: チップNTCサーミスタと従来のSMD NTCサーミスタの比較

半導体にとって非常に重要な120 °C前後の温度範囲では、チップNTCサーミスタが±1.5 Kと高い測定精度を示す一方、SMDサーミスタは±5 Kです。

つまり、SMDタイプのNTCサーミスタを組み込んだIGBTモジュールの場合、測定温度が120 °Cの時点で±5 Kの許容差を考えると、実際の温度は空乏層にとってきわめて重要な125 °Cにすでに達している可能性があるため、定格を下げなければなりません。他方、温度はまだ115 °Cにすぎない可能性もありますが、それでもスイッチオフが必要です。SMDタイプのほとんどのNTCサーミスタでは、はんだ付けに起因して最大±3 %の抵抗ドリフトが発生するため、測定精度がさらに低下することも考慮する必要があります。

 

しかし、チップNTCサーミスタの場合、状況は全く異なります。120 °Cでわずか±1.5 Kという狭い許容差のおかげで、温度が123 °Cに達するまでスイッチオフは不要です。したがって、チップNTCサーミスタを組み込むことでIGBTモジュールが性能限度まで使用可能になり、実用性が著しく向上することは明らかです。現在販売中のチップNTCサーミスタは、155 °Cまで動作可能で、最大動作温度は175 °Cまで引き上げることもできます。同時にB値の許容差は0.5 %に引き下げることもできます。以上の理由から、チップNTCサーミスタは、炭化ケイ素 (SiC) をベースとした半導体など、新世代の半導体にも最適です。

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