2011年3月

High-Q特性を持つ積層チップインダクタ

高周波回路の信号を整流

TDK-EPCは自社の先進的な高精度積層技術によって、非常にコンパクトでHigh-Qの積層チップインダクタ0402/0603シリーズを開発しました。TDKの新製品MLG0402Q/MLG0603Pシリーズは、携帯電話の高周波回路/高周波モジュール用に設計されています。

携帯電話の小型化・多機能化とともに、インダクタをはじめ携帯電話に使用されるどの部品にも小型化とパフォーマンスの向上が求められています。積層チップインダクタにも、いっそうの小型化とHigh-Q特性が必要とされています。TDK-EPCはLTCC(低温焼成セラミック)多層基板プロセス技術をさらに進化させることで、これらの要求に応えました。

新しく設計したチップの内部電極の製法は、従来を上回る高精度の位置制御を特長としています。その成果が高いHigh-Q特性をもつ積層チップインダクタMLG0402Q/MLG0603Pシリーズ(0402/0603パッケージ)です。積層チップインダクタはフェライトなどの薄いシートの上に、コイルパターンをペースト状の金属(一般にAg)で印刷し、これを何層にも積み上げ、らせん状の内部電極を形成することで製造されます。TDK が開発した積層工法は、コアに巻線をほどこさずにコイルを形成できるため、小型化と量産化の両方に適しています。

高周波用インダクタでは低損失と高いQ値が求められ

高周波回路用の積層チップインダクタでは、フェライトシートではなく誘電体セラミックスのシートが用いられます。数100MHz 以上の高周波領域ともなると、フェライトでは損失が大きくなって、高いQ値が得られなくなるからです(図1)。コイルは直流電流をスムーズに通しますが、交流電流に対しては抵抗のように作用します。これを誘導性リアクタンスといい、周波数が高い交流ほど大きくなります。また、導体とはいえ巻線には抵抗成分(R)があります。この抵抗成分に対する周波数に応じたインダクタンスの比(R/2 πf L)を損失係数といい、その逆数がQ値となります。fはコイルに流れる電流の周波数で、周波数に応じてQ値は変化します。
簡単にいえばQ値が高いほど損失が少なく、高周波用インダクタとして、すぐれた特性をもつことになります。携帯電話は多機能化とともにバッテリの消費電力が増大傾向にあり、高周波回路にはできるだけ低損失でHigh-Q の積層チップインダクタが求められます。

図1: 基板材料の異なるインダクタのQ値と周波数応答
Q値は周波数と基板材料によって異なります。フェライト基板は、数100MHz以上の帯域では使用できません。この帯域では誘電体セラミックスが使用されます。

分布容量の影響の克服

Q特性にすぐれ、しかも小型というのが、携帯電話などの高周波回路用として望まれるインダクタです。また、高周波になればなるほど、内部電極などがもつ分布容量(回路図には現れないコンデンサ成分)がQ値に大きく影響を与えるようになります。コイルの誘導性リアクタンス(X)は、周波数とコイルのインダクタンスに比例し、X =2 πf L という式で表されます。理想的なインダクタにおいて、インダクタンスが一定ならば、リアクタンスは周波数に比例するので、周波数- リアクタンスのグラフは直線となるはずですが、実際には高周波になるほどリアクタンスが下がっていきます。これはコイルがもつ分布容量によるものです。積層チップインダクタにおいては、コイルパターンどうしがコンデンサの電極のように作用して分布容量をもちます。また同様に端子電極とコイルパターンの間でも分布容量が生まれます。

図2: 積層チップインダクタの電極間の分布容量

積層チップインダクタが分布容量をもつということは、高周波領域においてはインダクタとコンデンサが並列接続したLC並列回路と等価になることを意味します。コンデンサはインダクタとは逆に、直流電流を遮断し、交流電流については周波数が高いほど通しやすいという性質をもちます。LC並列回路は共振回路として利用されるように、分布容量をもつ積層チップインダクタは共振周波数をもつことになります。これを自己共振周波数(SRF)といいます。このため、SRFを超える周波数ではインダクタとして作用しなくなります。また、Q値も急降下してSRFではゼロとなってしまいます。したがって、高周波回路や高周波モジュール用に積層チップインダクタを選ぶときは、必要なインダクタンス値を考えるだけでは不十分で、使用周波数に対して自己共振周波数が十分に高いものを選ぶ必要があります。また、高周波用インダクタでは表皮効果という問題も考慮に入れる必要があります。これは高周波の電流は導体の内部まで到達せず、表面だけを流れる傾向があり、このため電気抵抗値が急増してインダクタンスが下がってしまう現象です。


MLGシリーズの斬新な内部電極の設計

携帯電話の多機能化とともに、回路基板は多数の電子部品で超過密状態にあり、積層チップインダクタにもさらなる小型・低背化が要求されています。薄膜プロセス技術でコイルを形成する薄膜チップインダクタは、小型・低背化や高精度のインダクタを製造するのには有利な工法ですが、高いQ値を得るのは困難です。
このジレンマを克服するには、分布容量や表皮効果を極小化すると同時に小型化実現のカギとなる内部電極のデザインを最適化できるような、高精度の工法が求められます。


TDK-EPCの先進的なLTCCプロセス技術は、非常に高精度のスパイラル内部導体をもつ積層インダクタの安定した量産を可能にします。また、内部導体の形状、層間厚、配置デザインは、分布容量の極小化を無視できるレベルに抑えながらHigh-Q特性が得られるように考えられています。積層チップインダクタをMLG0603Pシリーズとしてラインアップしています。このHigh-Q特性を極小0402サイズで実現したのが、新製品のMLG0402Qシリーズです。MLG0402Q/MLG0603Pシリーズでは、コイルパターンの形状と配置を根本から見直し、コイル面積を可能なかぎり大きく確保しながら、端子電極間の分布容量を極小化することで、すぐれたQ特性を実現しました。

図3: MLG0402Q/MLG0603PシリーズのQと周波数応答

コイルパターンのわずかな位置ずれでもQ特性は低下します。これを防ぐため、MLG0402Qシリーズの開発にあたっては、高度な位置決め制御技術など、高度な手法を応用しました。これらの手法をさらに改良した結果、新たな内部電極デザインを採用したMLG0603PシリーズがTDK-EPCの製品ラインアップに加わりました。この新シリーズの特徴として、分布容量のさらなる極小化により秀逸なHigh-Q特性が持ち味です。従来品MLG0603Sタイプに比べ、特に800MHz以上の周波数領域のQが著しく向上しました。新製品MLG0402Q/MLG0603Pシリーズは、携帯電話の高周波回路用、たとえばSAWフィルタやVCO回路のインピーダンスマッチング用、チョーク用に設計されています。TDKのMLG0402Qシリーズでは、インダクタンスが1~15nHで、またMLG0603Pシリーズでは0.6~120nHの範囲で製品化。携帯電話ばかりでなく、そのほか、Bluetooth、WLAN、UWB、デジタルテレビチューナなどの高周波回路/高周波モジュール用としても、最適パフォーマンスを発揮します。

表: TDK積層チップインダクタMLG0402Q/MLG0603Pシリーズの主要技術データ

パラメータ/タイプMLG0402QシリーズMLG0603Pシリーズ

インダクタ [nH]

115

0.6120

動作温度範囲 [°C]

-55+125

-55+125

直流抵抗 (max.) [Ω]

0.42.6

0.065

定格電流 [mA]

100250

801000

寸法 [mm³]

0.4 x 0.2 x 0.2

0.6 x 0.3 x 0.3

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