2013年4月

モータ駆動用コンデンサとチョークコイルを一体化

誘導モータを経済的・効率的に双方向制御

STマイクロエレクトロニクス社のAC誘導モータの双方向回転制御システムには、単一パッケージにモータ駆動用コンデンサとチョークコイルを一体化したEPCOS LCapが採用されています。狭公差、コンパクトなサイズ、アセンブリの容易性などの特長を活かし、洗濯機、乾燥機、ガレージドアや門扉の開閉装置、パワーシャッタなどの経済的で省エネのモータ駆動制御用に利用されています。

省エネ洗濯機などの家電製品に用いられる標準的な双方向誘導モータには、一次巻線と補助巻線があります。モータのコンデンサは、必要な巻線に位相を切り替え、モータを必要な方向に始動する役割を果たします。従来は電気機械式のスイッチを使用して、モータを制御していましたが(オン/オフ、回転方向)、電気機械式スイッチはノイズを発生するため故障リスクが高まり、平均寿命が電子部品よりも短くなるという欠点があります。そこで、寿命と信頼性を高め、電力消費と駆動音を小さくすることを目的に、電気機械式に代わる電子制御式のソリューションが求められるようになりました。

きめ細かなプログラムを内蔵した高級洗濯機や乾燥機などのプレミア家電製品には、インバータで制御する可変速ドライブが採用されています。このようなソリューションでは、高度の可変モータ制御と省エネが達成されますが、電子回路は複雑になり、膨大なパーツ数が必要とされるばかりでなく、アセンブリの複雑さやコストも増大します。

信頼性の高い洗練されたソリューション

TDKとの共同でSTマイクロエレクトロニクス社は、双方向AC誘導モータ向けに、経済的で洗練された電子制御装置を開発して実用化しました(図1)。これは次のような回路構成になっています。

  • STMマイクロコントローラ装置(MCU)
  • 電力を必要な巻線に切り替えるSTMトライアック(ACST、BTA、および高Tjトライアックシリーズ)
  • 補助巻線の位相シフトと過電流からのスイッチ保護を目的としたEPCOS LCap

図1:誘導モータの電子制御

MCUは、誘導モータの一次巻線と補助巻線用の2つのトライアックを駆動します。EPCOS LCapは、モータ駆動コンデンサとチョークコイルを直列で一体化した電子部品です。

電気機械式スイッチを採用した回路に比べ、この方式には次のような利点があります。

  • トライアックは単一パルスで動作するため効率が高く、リレーコイルを常時電流が流れる無駄な電力消費を削除できる。
  • トライアックはリレーよりも使用寿命が長いため信頼性が高い。
  • スパークが発生しないためEMIが減る。
  • 機械式リレーを排除することでノイズが減る。
  • ガレージドアや門扉の開閉装置、パワーオーニング、シャッタなど、単一速度の双方向駆動用途に適する。

最新世代のトライアックは、この用途に最適です。切替が速く、5 mA以下のゲート電流でも作動します。また、きわめて高いサージ電流能力を持っています(ITSM)。1つの16 Aトライアックで、140 Aのサージ電流に20 ms耐え、100 A/μsの反復dI/dtにも耐えることができます。機械式リレーでは容易でない位相角も、容易に制御できます。

一体化したチョークコイルによる効果的な過電流制限
2つのトライアックをもつ電子回路では、過電流に対してスイッチを保護するためのチョークコイルが必要となります。たとえば回路のEMI(放射ノイズ)により、両方のスイッチが「オン」状態になると、コンデンサの放電により電流が無制限に流れます。このような過電流は、スイッチを損傷することがあり、これを防ぐにはインダクタをコンデンサに直列に挿入して電流を制限します。

(図2)で示されるように、同時に両方のトライアックが「オン」状態になった場合、1000 Aを超えるトライアック電流の最初のピークが25 μs間続きます。この値は、10 μFの位相シフトコンデンサを用いた2つのトライアックで駆動される230 V/50 Hz・定格150Wの双方向誘導モータでは一般的な値です。しかし、この大電流はトライアックの最大許容値を超えてしまいます。

図2:チョークコイルをコンデンサに直列接続した場合としない場合のピーク電流


両方のトライアックが同時に「オン」状態になった場合、回路がチョークコイルで保護されていないと-1073 Aのピーク電流が25 µs間スイッチに流れます(赤)。チョークがあると、ピーク電流は-232 A 、110 µs間に制限されます(緑)。

直列接続されたチョークコイルは、電流ピークを効果的に制限します。dI/dt比は、トライアックが損傷せずに耐えられる値にシフトします。図2で示されるように、80 μHのインダクタンスは、最初のピーク電流を110 μs間250 A未満に下げ、電流を安全使用域に保ちます(緑の曲線)。STマイクロエレクトロニクス社の試験では、位相シフトコンデンサと電流制限チョークコイルを単一パッケージに一体化したEPCOS LCapを使用したときに、最良の結果を得ています。

洗濯機では洗濯モード時に2つのトライアックが交互にオンになることで、洗濯機のドラムは双方向に回転します。誘導モータにおいては、2つの巻線の一方が電源電圧により直接給電され、他方は位相シフトと高電圧を供給するモータ駆動コンデンサから給電され、650 Vのピーク値に達します。脱水モード中は、ドラムが最高速度で一方向にのみ回転するため、一方のトライアックだけがオンになります。

2つのコンポーネントが1つのパッケージに

EPCOS LCapは、モータ駆動コンデンサとチョークコイルを単一のパッケージに一体化したもので、それぞれ別々の場合と比べると、性能および物流上の利点が次のように多数あります。

  • 低ESR
  • 狭公差で長期間の安定性
  • 高い堅牢性とメンテナンスフリー
  • コンパクトサイズ
  • 接続が4か所ではなく2か所
  • アセンブリ時間が少ない

単一パッケージに一体化されたコンデンサとチョークコイルは、それぞれ単体で組み合わせた場合と比べて、より狭い公差が得られます。というのも、空心チョークコイルにおいては、機械的な影響で巻線を物理的な変化を与えて公差を大きくしてしまうからです。LCapはその理想的な電気特性に加えて、一体化した電子部品であるために、生産ラインにおけるさまざまな利点があります。また、部品数が少ないため、アセンブリ作業が少なくてすむ結果、故障率が改善されます。このような利点によりLCapの技術は、経済的かつ組立て容易なソリューションとして、世界のマーケットリーダーに採用されています。

表1:EPCOS LCap一体化モータ駆動コンデンサ/チョークの主要データ

キャパシタ
定格キャパシタンス [µF]3 ~ 50
定格電圧 [V AC]230 ~ 450
許容誤差 [%]± 5
チョーク
定格インダクタンス [µH]5 ~ 100
許容誤差 [%]± 10

EPCOS LCapには、多様なキャパシタンス値とインダクタンス値を持ったタイプがあります。小型モータ用など、上記以外の値に対応するタイプも要望に応じてご利用いただけます。

表2:LCapとトライアックの一般的な組合せ

モータ電力EPCOS LCap (B32350*)トライアック 1)
[W@230 V、50 Hz]キャパシタンス [µF]インダクタンス [µH]Type
12045ACST610-8
BTA06-800TWRG
BTB12-600TWRG
1901080ACST1235
ACST1035
BTA12-800CW
25050100ACST1235
ACST1035
BTA12-800CW

1) ) STMicroelectronicsから

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