2014年4月

車載Ethernet用コモンモードフィルタ

高速車載LANに向けたノイズ対策

マルチメディアやエンターテインメントを情報通信技術で統合した車載インフォテインメント(IVI)システムに最適な高速車載LANとして、Ethernetの導入が急速に推進されています。CAN、FlexRayなどに向けた各種車載LAN用コモンモードフィルタを提供しているTDKでは、すぐれたノイズ抑制効果を世界最小クラスの形状で実現したEthernet用コモンモードフィルタを開発しました。

GPSシステム、マルチメディアやエンターテインメントを情報通信技術で統合した車載インフォテインメント(IVI)システム、高度な運転支援システム(DAS)などが自動車に普及していくにつれ、車載LANの高度化、特にデータ転送速度に関する要求が高まっています。データ転送速度が最大1MbpsのCANはいちはやく確立された車載LANで、自動ドアロック、シート、ライト、エアコン、ダッシュボード計器類など、ボディ系のECU(電子制御ユニット)のネットワーク形成に使用されます。データ転送速度が最大10 MbpsのFlexRayは、安全系やとパワートレイン系のアプリケーションに適していて、ABS、電動パワーステアリング、ECU(エンジン制御ユニット)などのネットワーク形成に使用されています(図1)。

図1:各種車載LANとTDKの車載LAN用コモンモードフィルタ

Ethernetは車載インフォテインメント系のネットワーク形成に適しています。これらのシステムには、運転支援システム(DAS)やナビゲーションシステムのカメラなどが含まれます。

ただし、こうした従来の車載LANは、大容量のデータを高速転送する必要のある先進のインフォテインメント系のアプリケーションに対応するようには設計されていませんでした。また、基本的にそれぞれ独自の配線システムと制御システムを持つ閉じたネットワークであり、相互運用することはできませんでした。これに対してEthernetは各種車載LANのつなぐバックボーン(基幹ネットワーク)として機能することができます。このため、より高度なネットワーク・アーキテクチャーが可能になり、自動車メーカーにもさまざまなメリットをもたらします。

以上のような理由から、現在、世界の主要な自動車メーカーや電子部品メーカーの多くは、車載アプリケーションの新たなコネクティビティ規格としてEthernetベースの車載LANを推進しています。言うまでもありませんが、Ethernetは、すでにコンピュータおよび周辺機器、通信機器、マルチメディア機器などを結ぶネットワークプロトコルとして確立された技術です。

最大100 Mbpsまで拡張可能な車載LAN

Ethernetは最大100 Mbpsのデータ転送速度に対応し、車載インフォテインメント系のアプリケーションに最適なネットワークプロトコルとして急速に普及しつつあり、すでに故障診断システム(OBD)としても使用されています。また、自動車内のネットワーク化に必要とされる帯域幅が拡大を続ける中、Ethernetでは拡張可能なさまざまなソリューションを提供することができます。これからの自動車は車線変更支援用などに高性能カメラが搭載されることが予想されるだけでなく、無線LANや3G/LTEなどで高速通信するスマートフォンやタブレット端末にも対応する必要があります。

ますます多くのアプリケーションや機器が自動車内でネットワーク化されるにつれ、車載LANの配線の長さや重量にも注意が向けられるようになっています。軽量の非シールドツイストペア線であるUTPケーブルを採用していることは、車載Ethernetの大きなメリットです。自動車メーカーは、配線の長さと重量を大幅に削減し、自動車のエネルギー効率を改善することができるからです。

車載LANのEMC対策の課題

車載LANにおけるノイズの抑制は、信号やデータの送受信と処理における重要な課題になっています。車載Ethernetは、ワイヤハーネス(高速信号を伝送するケーブルや電源を供給するケーブルなどの束にコネクタを取り付けた部品)を使用して各種システムの機能ブロックを相互接続します。ただし、信頼性の高い高速データ送信を実現するには、ノイズ抑制を高めるとともに、データ信号の減衰を抑制する必要があります。また、UTPケーブルには特殊なEMC対策が必要になります。このため、コモンモードノイズ抑制に関して、車載Ethernetの規格は、CANやFlexRayよりも厳しくなっています。

車載LANのコモンモードノイズの抑制は、ECU(電子制御ユニット)のインタフェースに配置されたコモンモードフィルタによって行われます。コモンモードフィルタは、ECUの物理層チップから放射されるノイズを抑制するとともに、入射ノイズからチップを保護します(図2)。

図2:車載Ethernetにおけるコモンモードチョークの機能

コモンモードフィルタは入射ノイズからECUの物理層チップを保護するとともに、UTPケーブルから放射されるノイズを抑制します。

すぐれたコモンモードノイズ抑制効果

車載Ethernetに関する厳しい要件を満たすために、TDKでは市場をリードする車載信号ライン用コモンモードフィルタACTシリーズに、車載Ethernetに向けたACT45Lシリーズを新開発してラインナップを拡充しました。ACT45Lシリーズは、現時点でトップクラスのコモンモードノイズ抑制効果を有し、ノイズの減衰が進むにつれ、コモンモードフィルタとしての性能が向上します。TDKの高度な技術により、ACT45Lシリーズの特性(モード変換特性Scd21)は、最大100 MHzまでの広い周波数範囲にわたって既存製品よりも15 dB~25 dBも向上しました(図3)。コモンモードインダクタンスは200 µH、−40 °C~+105 °Cという広い温度範囲で使用することができます。

図3:TDK ACT45Lシリーズのコモンモードノイズ抑制

新製品TDK ACT45Lシリーズのコモンモードノイズ抑制効果は、車載Ethernet規格で求められる要件を十分に満足しています。最大100 MHzの広い周波数範囲にわたって、特性(モード変換特性Scd21)は既存製品よりも15 dB~25 dB向上しています。

世界最小クラスの車載Ethernet用コモンモードフィルタ

ACT45Lシリーズは、実装面積4.5 × 3.2 mm、高さわずか2.8 mmという小型・低背タイプで、世界最小クラスの車載Ethernet用コモンモードフィルタです。既存技術による従来製品と比べて、ACT45Lシリーズは実装面積で73 %、容積で84 %削減できます(図4)。

図4:小型・低背タイプの車載Ethernet用コモンモードフィルタ

TDKのACT45Lシリーズは、新開発のコア材料および自動巻線システムで製造されており、従来材料や手動巻線によるコモンモードフィルタと比べて大幅に小型化されています。

全自動製造プロセス向けに最適設計

新製品ACT45Lシリーズは、全自動プロセスで製造できるように設計されています(図5)。まずNi-Znフェライト材をベースとする矩形のドラムコア(DRコア)に自動巻線してから端子電極がコアに取り付けられます。続いて、閉磁路構造とするために、耐熱性・耐湿性の高い接着剤でフェライトプレート(SPコア)がDRコアに接合されます。その結果、ACT45Lシリーズは、車載用受動電子部品に関する試験規格AEC-Q200の要件を満たす高い信頼性と均一な品質の維持を実現しました。

図5:全自動製造工程向けの設計

TDKのACT45Lシリーズは、全自動製造プロセス向けに設計されています。2本の巻線と端子電極がDRコアに取り付けられた後、耐熱性・耐湿性の高い接着剤でSPコアと接合されます。

TDKの車載LAN用コモンモードフィルタの製品ラインナップ

車載Ethernet向けACT45Lシリーズの新開発により、TDKの車載用EMC対策部品のラインナップがいちだんと拡充されました。さらにTDKでは、CANおよびFlexRay向けコモンモードフィルタの強化を図るため、既存製品ACT45BシリーズとACT45Rシリーズに加えて、小型化を図ったACT1210シリーズも新開発しました。3.2 ×2.5×2.4mmというコンパクトな形状で、世界最小クラスのコモンモードフィルタです。既存製品と比べて、実装面積は約45 %、容積は1/2強まで削減できます。また、−55 °C~+150 °Cという広い使用温度範囲も特長です。

表:車載バスシステム用TDKコモンモードチョークの製品構成

シリーズACT45L(新規)ACT45R ACT45B ACT1210(新規)
アプリケーション車載EthernetFlexRayCANCAN / FlexRay
寸法[mm]4.5 × 3.2 × 2.83.9 × 2.5 × 2.5
コモンモードインピーダンス
最小[Ω]*
10000 ***2200300~2000300~2200
コモンモードインピーダンス
[µH] **
20010011~100
直流抵抗
最大[µH]
4.51.50.6~2.00.4~1.5
絶縁抵抗
最小[MΩ]
10
定格電流
最大[mA DC]
1000.20.15~0.25150~300
定格電圧
最大[V DC]
5080

* 10 MHzで
** 100 kHz(+50/–30 %)で
*** 基準値(規定なし)

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