2012年4月

電源回路を保護するサーミスタ

サージ電流を制限する高信頼性のサーミスタ

EPCOSのNTCサーミスタとPTCサーミスタの幅広い製品は、電源回路を過剰な突入電流やサージ電流から保護するセラミックス素子です。信頼性が高くデザインインの手間が最小限で済むことが大きな特長です。

どのタイプの電源でも、整流後の直流電圧の平滑化・安定化を図るために高定格コンデンサが使用されます。これらのコンデンサは、起動時に放電していた場合、短絡して整流器や電力線に影響を及ぼします。たとえば、非常に大きな電流が発生して整流器が壊れたり電力ヒューズが作動したりします。比較的大きなトランスやモータのようなインダクタンスに由来する誘導負荷には、非常に大きな突入電流が発生する場合もあります。

EPCOSの NTC サーミスタや PTCサーミスタは、このような問題にコスト効果と信頼性の高いソリューションを提供します。 NTCサーミスタは、特に最大出力100 Wクラスの電源用のICL(突入電流リミッタ)として用いられます。 図1はICLを備えた電源入力回路の略図です。

図1: ICLを備えた電源入力
EPCOSのNTCサーミスタは、電源の起動時の電流を制限し、ヒューズの作動や整流器の破壊を防止するICL(突入電流リミッタ)として機能します。

ICLとして使われるNTCサーミスタは温度依存性抵抗器であり、温度上昇に伴い抵抗値が低下する負の温度特性をもつセラミックス素子です。 25 °Cで起動したときの抵抗値が比較的高く(1~120 Ω)、負荷に弱い電流しか流しませんが、この電流は徐々にサーミスタを加熱し、負荷によって指定された定格値に達するまで増大します。 このような性質により、結果として負荷は穏やかで安全に起動します (図2)。 一般に、ICLはこの段階で周囲温度を10~30 K上昇させます。

図2: 電流は時間の関数として表される
EPCOSのNTCサーミスタをICLとして使用すると、突入電流が大幅に制限されることがはっきりと分かります(緑)。

ICLとして用いられるEPCOSのNTCサーミスタは、導通時のきわめて低い抵抗値を特長としています。 それに応じて電力損失も小さく、少なくとも小~中規模の電源の場合は、機器全体の効率に及ぼす影響は無視できるほどです。また、比較的大きな電源の場合は、機器の定格電流に達したらICLをリレーでブリッジ(橋絡)させることができます。


NTC ICLの選択基準
正しいNTC ICLを選択するには以下の点が重要です。

  • ICLの最低定格を決定する負荷コンデンサ
  • 最大連続電流と最大周囲温度(起動後にICLがブリッジされるまで)
  • 25 °Cのときに必要とされる突入電流の減衰量

素子の定格を決める場合、最大連続電流がICLの最大許容電流値(Imax)を超えないことが重要です。 図3は電流と温度に関するEPCOSのNTC ICLのディレーティング特性を示しています。

図3: EPCOSのNTC ICLのディレーティング特性

S153~S464 ICLとS237 ICLの最大電流値は、次の式により、温度の関数として求められます。

誘導負荷を保護するためのNTC ICL
誘導負荷には上記のような悪影響を及ぼす非常に大きな突入電流も発生します。 誘導負荷にはコンプレッサやポンプ、比較的大きな掃除機、コンベアベルトのドライブなど、起動の遅い負荷をもつ高定格のトランスやモータが含まれます。 このような用途の場合、NTC ICLの定格をどのように設定するか、以下のトランスの例で示します。

出力: 1.0 kVA

突入電流測定値: 350 A

電圧と許容差: 110 V AC ±10%(99~121 V AC)

周波数: 60 Hz

効率 (η): 70 %

最大連続電流値は、出力、効率、最低電源電圧値から求められます。

起動時に発生する最大エネルギーを求めるには、トランスのインピーダンス(Z)とインダクタンス(L)を計算する必要があります。

次に、式「E = 0.5 × Z ×I2」によってNTC ICLの最大エネルギー発生量を計算します。

EPCOS B57364S2109A002 ICLは、求められている仕様を満たします。 70 Jを吸収し、0~65 °Cで16 Aの連続電流を処理できるように設計されています。

PTCサーミスタによる短絡回路からの保護
突入電流のほかにも、機器内部の過剰な連続電流や短絡などのリスクがあります。 通常、これらのリスクは連結回路のコンデンサや電力半導体の欠陥に起因します。 このようなリスクは、EPCOSの PTCサーミスタの直列接続によって解決できます(図4)。 NTCサーミスタとは逆に、正の温度特性をもつPTCサーミスタを用いたのがPTC ICLです。室温では低抵抗値を示しますが、過電流が徐々にPTC ICLを加熱して、高抵抗状態になると電流を制限します。こうしたセラミック素子は、事実上の自己リセットヒューズであり、電流サージがおさまるとPTC ICLはすぐに温度が下がり、低抵抗の伝導状態に戻ります。

図4: EPCOSの PTC ICL

コンデンサ充電用ICLとして用いられる2種類のEPCOSの PTCサーミスタ

PTC ICLの定格設定
この素子に加わる最大エネルギーは、PTC ICLの熱容量とPTC ICLが伝導し続ける閾値である最大許容温度上昇値の積によって算定します。 次の式によって求められます。

非常に大きな負荷を保護する場合、PTC ICLを並列または直列に接続する必要があります。 必要な素子の数は、次のように計算します。

どちらの式も記号の意味は以下のとおりです。
C:リンク回路のコンデンサの静電容量(F)
Cth: PTCサーミスタの熱容量(J/K)
EPTC: 高抵抗状態になる前のPTCサーミスタへの最大エネルギー供給量
N: 必要な部品数
TA, max: PTCサーミスタの最大周囲温度
Tref: PTCサーミスタのリファレンス温度(°C)
V: コンデンサの充電電圧ピーク値

EPCOSの PTCサーミスタはその急峻な特性により、過熱検知測定にも適しており、 そうした用途に合わせてSMDケースサイズ0805、0603、0402の製品を用意しています。 ケースサイズ0805のB59721A* シリーズは、応答温度が70~130 °Cで10 K刻み、定格抵抗値は680 Ωです。 B59641A*(0603)/B59421A*(0402)シリーズの応答温度はそれぞれ75~145 °C、75~135 °C、どちらも10 K刻みです。 定格抵抗値は470 Ω、最大許容動作電圧はどのタイプも32 V DCです。

これらの素子は電源のホットスポットに取り付けられ、過熱防止用途のファン制御装置に使用することもできます。

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