TDK Electronics

集積化・小型化のトレンド

2014年10月24日

受動部品の埋め込み

新しい材料と集積技術により、受動部品の埋め込みと集積化は大きな進歩を遂げています。埋め込み用として設計された新たな小型部品は、さらにコンパクトで信頼性の高いシステムを実現します。

受動部品が基板内埋め込みや集積技術に適しているかどうかは、多くの場合そのサイズと耐久性で決まります。TDKは革新的なコンデンサとサーミスタを開発、そこには受動部品の優れた埋め込み方法を可能にする最先端の集積技術を採用しています。

IGBTモジュールにコンデンサを埋め込む

Si素子やSiC素子を用いたミッドパワー用IGBTモジュールは、外付けのスナバコンデンサを従来必要としていました。これまでは、このような部品を埋め込むことが出来なかったため、寄生インダクタンスの元となる長いリード線を短くすることで取り付けられていました。また、従来のコンデンサは、その寸法に関係なく、IGBTモジュールを直接アセンブルする時に発生する熱に対して十分な耐久性がありませんでした。さらに、これらのコンデンサの中には、単位体積あたりの静電容量が小さかったり、高電圧下で静電容量が大きく低下するものもありました。

現在ではこれらの欠点のない全く新しいタイプのコンデンサ、EPCOS CeraLink™が開発されています。CeraLinkは、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)セラミック材をベースにしているため、従来のセラミックコンデンサと対照的に、電圧印加時にその最大静電容量を持ち、リップル電圧が加わるとさらにそれは増加します。(図1)

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図 1:

EPCOS CeraLinkの電圧-静電容量特性

他のコンデンサ技術とは対照的に、EPCOS CeraLinkの実効静電容量は、印加電圧の増加とともに上昇します。リップル電圧の影響は、この効果をさらに増幅します。

もう1つの利点は、その高い絶縁抵抗です。CR積は、25 ℃で 70000 ΩFであり、その値は150 ℃でもわずかに低下するだけなので、熱暴走の防止に効果的です。さらに、寄生インダクタンスも非常に低く、ESRは100 kHzでわずか50 mΩ、1 MHzでは10 mΩに低下します。その結果、非常に低損失になります。ESRは温度上昇とともにさらに低下します。85 ℃では25℃での初期値の20パーセント未満です。これにより、25 nsから30 nsの充放電時間を実現できます。CeraLinkコンデンサのESLは、5 nH以下であり、特に高速スイッチングインバータに適しています。

CeraLink技術のこれらの利点は、スナバコンデンサとしてIGBTモジュールに埋め込まれるように運命づけられたものと言えるかもしれません。定格電圧500 V DCのSMDタイプのスナバコンデンサとして2種類が販売されています(図2)。薄型の1 μFタイプの寸法は、わずか、4.35 mm × 7.85 mm × 10.84mm、5 μFタイプでも寸法は、13.25 mm × 14.26 mm × 9.35 mmと特にコンパクトで半導体のすぐ近くに配置することができ、ESLも無視できます。

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図 2:

IGBTモジュール内集積用EPCOS SMD CeraLink

CeraLink 薄型1 μFタイプ(左)と5 μFタイプ(右)は、IGBTモジュール内に埋め込むように設計されています。コンパクトな寸法を特長としながらも、150 ℃までの高温に耐えることができます。

IGBTモジュールに温度保護素子を埋め込む

インバータ内のIGBTは、上限温度で作動中に最大効率を発揮します。そのため、作動温度の正確なモニタリングが半導体の損傷を防ぐために必要です。しかし、標準的なSMD用NTCサーミスタは全ての半導体アセンブリ工程に対応できるわけではないため、その適合性はかなり限定的で、特に高温はんだや加圧銀焼結といった工程で問題となりました。

新しいNTCサーミスタは、アセンブリ工程で発生する熱的、機械的ストレスに耐えることができます。さらに、半導体基板のはんだ付けの際に特別なパッドを必要としないため省スペースが実現されます。この問題を解決するため、ウェハーベースの製造工程が開発されました。(図3)

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図 3:

上面と底面接触のEPCOS NTCサーミスタとそのウェハー

完成したキャリア付きNTCウェハーと(左)と個別のNTCチップ(右)。一般的な側面接触ではなく、平らな接触面が上面と底面にあります。

ウェハーから製造されるNTCサーミスタの大きな利点は、電気的な接続箇所がチップの上面と底面にあるというその形状です。これによりNTCサーミスタの下部端子を従来の半導体工程で製造される半導体基板と直接かつ完全な面接触の形で接続することができます。上部端子は、通常IGBTで使用される従来のワイヤーボンディングで接続されます。より完璧なボンディングを実現するため、接続面の金メッキ、銀メッキのオプションもあります。

これらのチップNTCサーミスタの他の利点としては、電気的および熱的な公差が最小化されている点が挙げられます。この精度は以下の特別な工程技術によるものです。即ち、個々の素子をウェハーから分離する前に100 ℃でのウェハーの全抵抗値を測定し、切断するサイズをこの抵抗値をもとに決定します。こうすることにより、分離された個々の部品の公差は、25℃での測定結果から切断された標準的なNTCサーミスタに比べはるかに小さくなります。(図4)

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図 4:

NTC技術の精度比較

半導体にとっては臨界とされる約120 ℃の温度領域では、チップNTCサーミスタには±1.5 Kの高い測定精度があります。対照的に、25 ℃の測定結果から作成された標準タイプは、±5 Kより大きい比較的大きな公差を示します。

EPCOSチップNTCサーミスタは、100 ℃でわずか±1.5 Kと小さな公差しかないため、IGBTの最高使用温度に近い温度で作動させることが可能であり、より効率的に使用できます。この方法は、SiCやGaNといった次世代の電力用半導体にも適しています。

LTCCを使った3D集積法

スマートフォンやモバイル機器は、より多くの周波数帯への対応やより高い機能を提供しながらコンパクトにするため、個々の部品の小型化に加え最大レベルの集積化が必要とされています。LTCC技術は、インダクタ、コンデンサ、抵抗体といった受動部品の機能を薄いセラミック層の中に埋め込むことを可能にした確立された技術です。集積度のレベルによりますが、LTCC技術は主にスマートフォンのRFモジュールに使われており、ディスクリート部品構成の場合と比較して最大80パーセントまでスペースを削減することができます。

ただし、LTCCは500℃以上の高温で焼成されるため、半導体のような熱に弱い部品は、焼結後モジュールの上部にピギーバックモードで取り付けなければなりません。

SESUBによる半導体集積化

TDKのSESUB(Semiconductor Enbedded in SUBstrate、IC内蔵基板)技術は、実際にICを基板の中に埋め込むことで集積化する新しいアプローチ方法です。内蔵されたICを含めても、SESUB基板の全体の厚さはわずか300 µmです。(図5)

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図 5:

TDK SESUB基板の断面

4層構造の基板は、全ての配線、スルーホールも含め、わずか300μmの厚さです。多数のファインピッチI/Oを持つICでさえもTDK SESUB基板に内蔵することができます。必要なディスクリート部品は、基板の表面上に配置できます。

必要なディスクリート部品は、基板の表面上に配置できます。さらに集積密度を高めるために、次のステップでは薄い受動部品も基板内に埋め込むことになるでしょう。SESUBモジュールは3次元構造なので、設計次第では従来のディスクリートの場合より50%から60%面積を縮小できます。

SESUBモジュールでは、基板レイヤー内の配線が短くなることで寄生効果の改善につながり、システムの性能向上に寄与します。SESUB基板内の金属層のシールド効果によりEMC性能も改善されます。さらに、SESUBは、ICを完全に内蔵することで優れた熱特性を実現します。ICチップの全ての表面は積層板に完全に接しており、半導体から基板レイヤーへの熱伝導は最適化されます。これらのレイヤー自体が銅製の微細接続グリッドを持っているため非常に均一で効果的な放熱効果があります。特に、優れた熱特性は、電力マネジメント、無線送受信、プロセッサー、パワーアンプといった分野、即ちスマートフォンの全ての主要部品への応用に際して重要です。小型化に加え、LTCCとSESUB技術の双方を使用するかどうかの鍵となる基準は、高い信頼性と大幅な消費電力削減効果が得られるかどうかです。

SESUBの代表例として超小型の Bluetooth 4.0省電力モジュールが挙げられます。これは、Bluetooth 4.0省電力(LE)規格に対応して開発されたもので、Bluetooth Smartとして市販されています。(図6左) 取り付け占有面積はわずか4.6 × 5.6 mm2、挿入高は1 mmであり、新製品のSESUB-PAN-T2541 Bluetooth 4.0 LEモジュールは、Bluetooth Smartモジュールとして世界最小クラスです。また、このモジュールは、ウェアラブルデバイスでの使用にも大変適しています。

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図 6:

省スペースのTDK SESUBモジュール

左:TDK Bluetooth省電力モジュールは、Bluetooth4.0省電力(LE)規格に対応して開発したもので、わずか4.6 mm x 5.6 mmの世界最小寸法を誇っています。右:スマートフォンの電力管理機能のすべてがTDKパワー・マネジメント・ユニットに集約されています。

SESUBはスマートフォンの電力管理にも大変適しています。TDKのパワー・マネージメント・ユニット(PMU)モジュール(図6右)では、電源管理用ICが初めて直接基板内に埋め込まれました。これにより開発費の軽減や開発期間の短縮が可能となります。新しく開発されたSMDバージョンのコンデンサと、パワーインダクタを組み合わせることで、モジュールの寸法はわずか11.0 mm × 11.0 mm × 1.6 mmとなります。このモジュールは、低ノイズ、高PSRR(Power Supply Rejection Ratio、電源電圧変動除去比)、23チャンネルまでの低ドロップアウト・レギュレータおよび極めて効率的な充電式リチウムイオン電池用充電回路に加え、最大出力電流2.6Aの5チャンネル構成のバック・コンバータ用高効率電源も備えています。

プリント基板の集積化潜在力を活用

多層プリント基板に、単なる搭載基板ではなくより効率的に集積化する可能性を求めて、パートナーと共同でさらなる能動および受動電子部品の埋め込み技術の開発に取り組んでいます。とりわけ、集積技術の標準化は、高度に小型化したモジュールを実現する上で重要な役割を果たすものであり、積極的に進めなければなりません。

特に、ほとんどのバッファリングやノイズ抑制に必要なMLCCは、集積化、そして小型化に貢献する大きな可能性を秘めています。TDKは、プリント基板に内蔵可能なMLCC、CUシリーズを開発しました。従来のMLCCと異なり、CUシリーズの電極は錫メッキではなく銅製で、直接プリント基板の積層レイヤーに挿入されます。これらのMLCCは、その挿入高が0.11 mmから0.25 mmと非常に低いことで識別可能です。(表)

表:プリント基板埋め込み型のTDK MLCC、CUシリーズ

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図 7:

形状:CUA1

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図 8:

形状:CUA2

タイプCUA1CUA2
最大静電容量 [µF]0.221
長さ [mm]       0.61.0
幅 [mm]0.30.5
最大挿入高 [mm]0.11~0.220.11~0.25
端子幅 [µm]230350

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